増沢洵自邸「最小限住宅」
設 計 増沢 洵(ますざわまこと|1925-1990)
建築年 1952 : S27年
規 模 49.6㎡|15坪
所在地 東京都渋谷区大山町
既成概念にとらわれない間取りの構成
「この家には玄関が無いんだね」
と、一緒に見に来た子供が驚く。
1階平面図 |
「この住宅は戦争が終わったすぐ後に建てられ、最小限住宅って名付けられているよ。物資が少ない上に住宅金融公庫からお金を借りる時には、住宅の大きさに決まりがあったんだよ。もっとも効率よく丈夫な家を造るために、平面形状は非常にシンプル。3間x3間の正方形を間口幅1間で3分割、奥行き方向に1.5間幅で2分割して、計12本の通し柱で造られている」
「この前見に行った住宅も最小限住宅って言わなかった?」
「池辺氏の立体最小限住宅かな」
「そうそう」
「この住宅もいかに無駄を省いて、少しでも豊かな生活を送ろうと試行錯誤を重ね、この家を設計した増沢氏が自分の家で挑戦して、多くの人に同じ住宅を提供しようとしたんだ」
「ふーん」
2階平面図 |
「君が言ったように、玄関が無いだろ」
「うん」
「家に入る時にはちょっと気をつけて、靴についた泥を入り口で払い除けたり、雑巾で拭いてしまえば問題は無い。洗面所やトイレは1日に何回も使うから、居間から直接行けるけれど、お風呂は多くても1日1回だから、脱衣室は無くしてお風呂に入る時には寝室を脱衣室として使うんだな」
「お台所もなんだか狭く感じる」
「確かに流し台は1間ほどだから、お料理をしにくいように見えるけれどほら、食卓も流し台の一部と使えば出来上がったお料理をすぐに食卓に並べられるよ」
「決められた物資・決められた資金の中で、如何に暮らしやすく、豊かな生活を送るか無駄なものを削ぎ落とし、一つの空間を多目的に使うか徹底的に考え抜いた住宅といえるね」
「そんなこと言われても僕には難しいけれど、2階まで見えるからとても広いよ。ここでキャッチボールもできるかな」
「それは楽しいかもしれんな」
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