2016年4月27日水曜日

丹下健三氏設計「国立代々木競技場」耐震改修



平成28年4月20日「国立代々木体育館」を運営、管理する日本スポーツ振興センターは、震度7の地震で倒壊する恐れがあることから平成29年春から平成30年度末までの2年弱、同体育館の耐震改修工事を行うと発表した。耐震改修は1964年の建設以来初めてで、つり屋根構造の第1体育館、円錐(えんすい)状の天井の第2体育館ともに工事期間中は閉鎖するとしている。

「国立代々木体育館」を設計した丹下健三氏の自邸は、いろいろと話題を生み物議を醸し出した作品の一つであるが、耐震改修されることなく取り壊されてしまった。
自邸は「近代建築の5つの要素」ピロティ・屋上庭園・自由な平面・水平連続窓・自由な立面を取り入れ計画された。敷地は古くから塀や門を築くことはお互い自粛しようという申し合わせがあった敷地であり、新築後は近所の大人たちにはあまり良い印象を与えなかったが、近隣の子供たちはこの庭でよく遊んでいたようです。「1階はピロティーにした開放的な庭として、2階にプライバシーのある住居計画して地域に親しみ易いものの表現を求めた」と語っていますが、平面から見てもそのボリュームが地域と合わなかったのかもしれません。
氏の建築はどちらかというと、地域に溶け込むといよりも、シンボリックでありランドマークとなる作品が多く、住宅地にはインパクトが強すぎたのでしょう。

平面図は一見、日本の伝統的な「田の字型」間取りと映るかもしれないが、発想としては自由な平面にパーテーションとして「襖・障子」を採用したといっても良いでしょう。この平面形に水平に連続する窓と自由な立面により住宅が表現されていた。近隣住民にはあまり評判がよろしくなかったようだが、建物のスケール、特に間口が広くサボア邸が主に細い円柱で1階ピロティーを構成していたのに比べ、壁で構成されたこの住宅は住宅地では、かなり威圧感があったのかもしれない。また、建築年が戦後10年も経過しておらず、近隣の住人の中には「わざわざ2階建てにしなくとも、平屋の方が資材が少なくて済む上に、地域に馴染んで良いではないか」と感じた人も多かったのではないだろうか。また、夫人がこの住宅に暮らし始めて精神的に辛い時期を過ごした、などという話も聞こえてきた。


この自邸は住宅を多くは手がけなかった建築家が、自費を投じて近代建築の要素を取り入れた建築に自身が暮らすことにより、その建築を体験し将来の建築のあり方を考える実験住宅であったに違いない・・・と、思いたい。

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