2016年8月1日月曜日

森の中のふたつ家

森の中のふたつ家
建築家 林雅子(はやしまさこ)1928- 2001
面 積 194.0㎡
建築年 1963 : S38
所在地 長野県軽井沢

大小ふたつの方形が連結する家
「地籍」「人籍」という耳慣れない言葉で、建築の発想を得てきたと建築家は語る。

「地籍」とは一言で言えば、建築物が建てられる場所・環境の個性である。巨視的にいえば、日本の土地には、日本人が歴史的時間のなかで育んできた建築がふさわしいのであるし、微視的には、地盤 の性状や表土の起伏、植生との関連、気象条件に沿った建築の姿があるはずである。
平面図

「人籍」とは、建築に映し出される、個人の個性である。建築という行為の特徴の一つには、人間がそこに住む空間をつくることである。建築は、そこに住む人間の顔を、否応なく写し出す。住まいを見れば、住人の人格が想像できるのも当然のことである。人間は、その趣味やライフスタイルに合わせた建築をつくって住もうと望み、一旦住みはじめれば、その空間のつくられようが、人格のうえに大きな影響を及ぼしはじめる。ここが建築のもつ重大な意味がある。
「地籍」「人籍」は、この世に存在する建築特有の属性である。建築は芸術でもあるので、建築の美しさだけを表現しようとする行為もあり得るわけで、したがって「地籍」「人籍」とは無縁の建築提案などというものもあり得るが、それだけなら模型かイラストで十分であり、実存の建築に仕立てることはないのである。

この住宅は、軽井沢の別荘地に計画され、二つの方形を連結させ、中間的・多目的空間である前室ホールでつながる。大きい方形はオーナーの別荘空間であるが、将来は本拠となり小さい方形は子供達家族の別荘として使用され、全体としては4家族の集合住宅とイメージされている。



 「新・空間の骨格」林雅子のディテール|章国社刊から引用

この建物は別荘であるが、その「ふたつ家」とした空間構成は、二世帯住宅のあり方として興味深く、二世帯住宅を計画される方にはとても参考になるでしょう。
45°線が使用されているため、一見複雑な間取りに見えるかもしれませんが、詳しくそれぞれの方形を見れば、大きな方形は、広々とした居間を中心とした回遊式の動線はストレス少なく暮らす、シンプルな空間構成がなされている点も見逃せない。また小さな方形は建物を四分割した上で、それぞれに各部屋が配置されている簡素な構成になっている。シンプルな空間構成でありながら、詳細な部分には女性ならではの細かな工夫や配慮がなされており、多くの若き建築家が林雅子氏のディーテールを求めた由縁でもある。



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