「NO 20」
設 計 池辺 陽(いけべきよし|1920.4.8 - 1979.2.10)
建築年 1954 : S29年
規 模 約60㎡
所在地 東京都目黒区
設備を家の真ん中に配置したコアプラン
戦争が終結した直後、日本の建築家は物資不足の中、質の高い住宅と暮らしを機械工業化に求めコストダウンと家事労働の軽減を図った。設備を中心に据えることにより、外観はかなり自由度を増し、画一化した工業製品の使用を見据えたいくつものプロトタイプが提案された。
NO 20|平面図 |
「このお住まいは平屋ですわね」
春しぐれの中、季節を先取りした桜色の傘をさした家内がささやいている。
「我が家は2階建てだが、この家は平屋にして仲間と唱える”機能主義”を進めてみた」
「あら、このお宅の軒下は随分と広いですこと」
「やはり、日本の家屋は軒下の空間も大切だよ。実質的には外壁を風雨から守ってくれるし梅雨時にも窓を開けて風通しも得られる。夏場の強い日差しも防ぎ室内の気温も下げることができる。それに軒下を自転車置き場や、今日のような天気では、物干し場としても使える」
「なかなか気のいいていること」
「中へお邪魔してもいいのかしら」
「かまわんじゃろ」
「このお住まいは木造って仰ってませんでした」
「基本は木造だが、コア部分の設備空間はコンクリートブロックを使っている」
「ご不浄と洗面、湯壺が一つのお部屋にまとめられているのですね」
「ああ、NO8の住宅では流し台だけを中心に配置したが、このNO20では水周り全てを中心に配置してある。この部屋の裏に流し台を置気、水周りを集中させることによっても資材の無駄を省きコストダウンできると考えたよ」
「お風呂は薪ではなくって」
「そう、湯は別のところで沸かしておる・・・」
「そうですか。なんと便利そうなことかしら・・・」
家内が毎日風呂焚きに苦労しておることは十分に承知している、そのためか、目には何かを訴える様子がうかがえるが、言葉を遮りさらに説明を続けることにしよう。
「このコアプランは、設備を真ん中に配置することにより、外壁を工業生産して均質化を図り、少しでも質の高い住宅ができないか試してみた」
ちょっと口を尖らせた家内はじっと聞いている。さらに
「コア部分を中心にして、家中をぐるりと回れる回遊式の動線、家事の負担を軽減させようと・・・」
「あらそれは、あなたが設計したNO8のお住まいと同じではありませんこと」
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