東京北区王子の一棟二戸建長屋
建築年 昭和5年頃
所在地 現存せず
傳通院「映画館裏蝸牛庵」?
昭和初期、工業が急成長していた時代、東京には労働力となる人たちが集中してくるようになった。この人びとを受け入れるための長屋が急増した時代でもある。
1階平面図 |
この間取りは昭和5年頃、東京北区王子の工場に隣接して建てられた一棟二戸建。間取りは、一階が二帖の玄関の間と六帖、四帖半の三室に二帖の台所と半帖の便所。二階は六帖一間である。東京では大正期から二帖の台所が間取りに現れ始め、一般のスタイルとして定着している。しかしこの二帖の台所で家族4〜5人分の食事をどのように作っていたのか興味深いものである。
玄関横には板塀で囲まれた前庭があり、板塀には植木棚を取り付けられていたようだ。クーラーなどないこの偉大には、高温多湿の梅雨や夏場をしのぐためにも、大きな開口が必要であり、家の中を道路から見えなくする板塀は重要だったのであろう。
2階平面図 |
明治の文豪、幸田露伴氏が暮らした「蝸牛庵」を2軒取り上げたが、小石川で最初に暮らした傳通院「映画館裏蝸牛庵」(私が勝手に名付けている)も小林氏の「蝸牛庵訪問記」から、このような住まいだったのではなかろうかと思う。
※参考:「間取り百年」吉田佳二著 彰国社刊
「蝸牛庵訪問記」小林勇著 岩波書店・講談社文芸文庫
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