2016年7月1日金曜日

清家 清 「私の家」

「私の家」

設 計 清家 清(せいけきよし|1918~2005)
建築年 1954 : S29年
規 模 50㎡
所在地 東京都国立


庭を居間に見立てたワンルームの平屋

日本における代表的な現代建築家、清家清氏はご自身の書「ゆたかさの住居学」(情報センター刊)の冒頭で「漢字には、住まいを指すのに二つの文字がある。すなわち「宅」と「家」である。この場合、宅はハードウェアーとしてのハウス、家はソフトウェアーとしてのホームにあたる。」と述べています。私は託つけてもうひとつ「宅」は男性「家」は女性にあたると加えたい。第三者と話すとき、ご婦人は「宅は・・・」といえばご主人のこと「家内は・・・」といえば奥様のことと認識しているからだ。つまり住まいは男女が協力することにより出来上がる、氏も著書の中で「夫婦は住まいの出発点」と言っている。
氏の設計した「私の家」は、戦後の家族、特に夫婦のあり方を「かたち」にした家ともいわれている。一方で、親のために設計したが、出来上がった住宅を見て入居を拒まれたとも聞き及ぶ。

清家 清「私の家」平面図

「参っちゃたなぁ〜」

隣の主屋から出てきたこの主は、頭を掻きながら笑顔で話しかける。

「どうかされました?」
「イヤー、この家に住みたくないってサッ!」
「あら」
「床の石張りが気になるそうだ畳がよかったって、それと室内建具が一枚もないことかな、そうそう厠と風呂が同じ部屋で、それも湯船がなく6尺ほどの管が一本だけってなんだあれはと、言われちゃった」

「これからお年を召されるお父様のことを考えて設計されたお住まいなのに残念だわ」

「本当だよ、高齢になっても気軽に外に出て、太陽の光を浴びて欲しいから、庭に出やすくしたし、ご近所のお友達も気軽に入れるように床も下げた、冬場は寒くないように床暖房まで備えて、室建具も家中を動きやすくするために無くしたのになぁ〜」

「それなら「親の家」改め「私たち愛の住処」にされてはイカガ」

「いくら僕だって、それは照れるな「私の家」だな」

「一人称が気になるけど、まあ、手を打ってあげてもよろしくてよ」

「それはありがたい、実はこうなることも予測して設計していたんだ。構造いわゆるハードな部分は、住宅が完成してしまうと動かせないが、設え(しつらえ)は、そこで生活する家族によって変化させれば良いと思う。もちろん年月が経つにつれ必要とされる設えも変化するだろうし、その変化にも対応できる住まいが、本来の機能主義の住宅といっても良いかな」

「そうね、私はこの家が塀で囲まれているおかげで、お庭も室内の一部に感じて、とても気に入っているの。室内の天井は少し低めで落ち着くし、お天気の良い日にお庭に出ると、まるで青空がどこまでも続く天井に思えてとても気持ちが良いわ」

「さすが我が姫君。いいこと言うね」

「玄関とお風呂だけは少し考えてよ、それと畳も・・・」


「わかっています」

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